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2006年3月15日 第164回国会 参議院本会議質問
「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案」

事故は細かいミスの組み合わせによって起ってしまう
事故のない、事故による犠牲者のない公共輸送の確立

参議院議員 水岡 俊一 


  私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案」について質問いたします。
 昨年は、東武伊勢崎線踏切事故、JR福知山線脱線事故、JR羽越線脱線事故、日本航空機の管制指示違反など、公共輸送における事故が相次いで発生をしています。また、一昨日、スカイマークエアラインズが機体に付いた傷の修理期限を把握していながら抜本的に修理をせずに運航させていたことが国土交通省の調査で明らかになっています。
 構造改革による急速な規制緩和、合理化、効率化がこれらの背景にあると考えますが、まず、北側国土交通大臣、安全規制の見直しを含め運輸の安全確保にこれまでどのように取り組んできたのか、また、一連の事故を踏まえた本法案によって公共輸送における安全が今後どのように確保されるのか、見解をお伺いします。
 昨年の4月25日、私の地元である兵庫県尼崎において発生したJR福知山線脱線事故では、107名の尊い命が失われ、549名が重軽傷を負われました。今なお、その多くの方々が後遺症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでおられます。私は、事故の当日と翌日、民主党の事故調査団の一員として事故現場を見てまいりましたが、現場は本当に悲惨な状態でありました。国として、事故のない、そして事故による犠牲者のない公共輸送を確立しなければならないと、その大きな責任を痛感したところでございます。

 規制緩和と安全監視のバランス

 事故後の航空・鉄道事故調査委員会の調査、JR福知山線の事故に関する中間経過報告、国土交通省の安全性向上計画の確実な実施についての勧告などを含めて、北側国土交通大臣はこの事故についてどのような認識を持ち、また事故後どのような安全対策を取ってきたのか、お伺いをします。
 本年の1月24日、JR伯備線で保線区作業員3名が作業中、通過する列車に接触して死亡するという痛ましい事故が発生しています。列車運行に関する安全対策だけではなく、保線作業を含めた総合的な安全対策の確立が不十分であることを示した事故だと考えますが、いかがですか。
 さらに、安全や技術継承に影響を与えることとなる人員削減や業務の外注など、事故の背後要因も含めた原因の徹底究明とそれに基づく対策の実施が必要と考えますが、北側大臣の見解をお伺いします。
 昨年9月6日、航空・鉄道事故調査委員会から出された「福知山線列車脱線事故に係る建議について」においては、事故の一次原因とともに二次原因としてインシデント、つまり事故に至る前の故障やミスなどの積み重ねが指摘されております。近年の運輸事業者における規制緩和が行き過ぎた合理化、効率化を招き、事故やトラブルに至ったと思わざるを得ません。国民の命を預かる公共輸送においては、経済的規制緩和を実施する際、安全面への影響を勘案しつつ慎重に実施すべきだったのではありませんか。北側大臣の公共輸送における規制緩和と安全監視のバランスについての方針をお聞かせください。
 これまでの事故調査は、機械に対するハード面や、運転、指令などの技術面が中心となっており、リーダーシップやコミュニケーションといったソフト面が軽視される傾向があったと言えます。つまり、ヒューマンエラー、人間のミスをいかに防ぐかという対策がおろそかになっていたのではないでしょうか。ヒューマンエラーについての北側大臣の見解をお聞きします。
 昨年1月には日本航空機の管制指示違反が発覚しています。その際には、ヒューマンエラーによる運輸事故が早急に対処すべき重大問題として認識されていたにもかかわらず、今回の法案の提出時期は遅過ぎたのではありませんか。ヒューマンエラー事故防止対策の観点から、北側大臣の見解をお聞かせください。
 公共輸送、特に鉄道や飛行機で乗客を運ぶ業務においては、日常起こる多くの操作ミス、故障、不安、疑問を社員が自由に同僚や上司に告げ、上司もそれをよく聞いて部下と一緒になって検討する職場の文化をつくることが最重要課題であります。それなくして安全、安心を目指す会社とは言えず、社員の士気も上がるはずがありません。
 特に、鉄道のような過密ダイヤで、複雑に接続され、他の会社と競合している公共輸送においてこそ必要な施策です。インシデント、ヒヤリ・ハットとともに、社員の、無理ではないか、いや無理だ、もう駄目、といった感触についても管理職は十分知っておく必要があります。そして、事業所のトップと管理職が安全に最大の関心を持ちながら、部下との双方向の会話を深める手段を積極的に講じなくてはなりません。

 安全対策に多くの国民が不安

 製造業を始め民間では、かねてより労使双方が労働安全衛生に関する話合いのテーブルを用意し、積極的な意見交換を積み重ねておられます。そこでは、内部告発者を守る仕組みとともに、真実と信頼を基に事故防止に努めてきたという文化がございます。ここで、川崎厚生労働大臣、民間における安全衛生の観点から見解を是非お聞かせください。
 いかに機械の精度を良くし、マニュアルを詳しくしても、事故は細かいミスの組合せによって起こってしまうものです。現在のJR、日本航空、さらにはスカイマークエアラインズの状態を見ていると、マニュアルが機能せず、正にインシデント、ヒューマンエラーなどが起こってもおかしくない状態にあるのではないかと多くの国民が不安を抱いています。北側大臣、国土交通省としてどのような具体的な対策を取るつもりですか。
 また、今回の法改正により航空輸送の安全にかかわる情報の報告及び公表の制度を改めることになりますが、これによりどのように安全性が向上するのですか。また、制度自体が十分機能するかどうかなど不透明な部分も多いことを踏まえながら、法改正による安全向上への効果について見解をお聞かせください。
 近年、飲酒運転、運転中の携帯電話などバス運転手の安全意識の欠如による事案、過重積載や過重労働を原因とするトラックの事故などが少なくありません。それらの事故などの原因に関してどのような分析を行い、ヒューマンエラーの防止を含めて、国土交通省と厚生労働省はどのような対応をしてきたのでしょうか。

 タクシー運転手を追い込む厳しい労働環境

 また、タクシー事業参入規制などの緩和が行き過ぎた合理化、効率化を招き、安全上の支障を生ずる状況を生んでいると思わざるを得ません。北側大臣、このことがタクシー運転手を長時間労働や低賃金など厳しい労働環境に追い込んでいるのではありませんか。川崎大臣にもお聞きをいたします。
 貨物・旅客運送事業及びタクシー・ハイヤー事業の安全性については、国土交通省そして厚生労働省との連携が始まったようですが、合同監査、監督や労働時間の改善、最低賃金法違反、労働条件の改善など課題が山積みとなっており、連携を更に強める必要があると考えますが、北側大臣、今後の連携の方向性を具体的に明らかにしてください。また、川崎大臣の見解も是非お聞かせをください。
 民主党は、安心、安全が今国会の主要テーマと考えていますが、その中でも踏切の安全対策の推進は、国民が求める優先順位の高い政策だと考えます。連続立体交差化事業は多大な費用を要するため、整備の順番待ちが発生していますが、北側大臣、負担軽減など事業の効率化のための方策の有無及び今後五ヵ年の踏切対策の数値目標、予算、財源の見通しはどうなっていますか。
 1991年に起こった信楽高原鉄道の事故の遺族がつくられた鉄道安全推進会議、つまりTASKは、警察、検察の捜査の限界を指摘し、当時の運輸省から独立した運輸安全委員会をつくるようにと提案されました。ようやく2001年、運輸省の航空機事故調査会を改組し、鉄道事故の調査部門を持つことが国会で決まり、航空・鉄道事故調査委員会として調査に当たることになりました。
 しかし、この航空・鉄道事故調査委員会は、アメリカの事故調査委員会とは違って警察の上にあるものでもないので、警察の捜査を一時的に停止させることはできず、調査の面でもハード面や技術面を主なものとしており、リーダーシップとかコミュニケーションなどソフト面についての調査能力を持っていません。北側大臣、これではヒューマンエラー、ヒヤリ・ハットやインシデントなどの調査において十分な機能を発揮できないのではありませんか。
 今回、航空・鉄道事故調査委員会は、原因の究明に加えて、被害の軽減を図るための調査提言機能の強化を図ることとしていますが、北側大臣、そのための予算、要員の確保など、事務局の組織体制の充実強化をどのように図るつもりですか。

 事故調査委員会の内閣府への移管

 アメリカの事故調査の国家運輸安全委員会、NTSBは、運輸省から独立し、大統領直属の独立行政委員会として徹底した事故調査活動を実施しています。また、日本学術会議の人間と工学研究連絡委員会安全工学専門委員会は、昨年6月23日の事故調査体制の在り方に関する提言において、各種事故を対象とする独立性を持った常設の機関を設置すべきとし、独立した事故調査委員会の必要性を強く提起しています。
 さらに、2001年の鉄道事故のための専門的な調査機関を設置するための法案が可決されたとき、衆参両院は、「調査委員会の組織のあり方については、今回新たに整備される委員会の活動を踏まえ、その体制・機能の強化、陸・海・空にわたる業務範囲の拡大等の必要性につき検証したうえで、諸外国の例を参考にしつつ、今後の課題として検討を行うこと。」との附帯決議を可決しております。事故調査委員会が発足して4年以上がたっておりますが、北側大臣、国土交通省としてどのように検討をしてきたのでしょうか。
 航空・鉄道事故調査委員会事務局の省別出身者構成を見ますと、事務局員41人のうち国土交通省出身者が36人も占めています。これは実に構成員の約9割に当たるわけです。この人数構成だけをとらえて論述するのはどうかと思いますが、アメリカの例や日本学術会議の提言もあることですから、独立性を重んじる観点から、委員会事務局には各省から専門性を持った人材を広く求めることを検討すべきではないでしょうか。北側大臣にお伺いをします。
 民主党は、航空・鉄道事故調査委員会の調査対象を、航空及び鉄道に加えて自動車にかかわる重大事故も調査対象とし、名称を運輸事故調査委員会に変更することなどを要求しています。北側大臣、変更するおつもりはありませんか。
 私は、事故のない、事故による犠牲者のない公共輸送の国を目指すためにも、事故調査委員会を国土交通省から省庁横断的な内閣府へ移管させるべきと考えますが、最後に北側大臣の英断を期待をして、私の質問を終わります。

答弁 北側 一雄・国土交通大臣


 保安監視等の事後チェックの充実強化

 運輸の安全確保のこれまでの取組と本法案による取組についてお尋ねがございました。
 国土交通省は、公共交通機関に係る最大の使命は輸送の安全確保であるとの認識に立ち、運輸事業者の事業運営に関し、必要な安全基準等の設定、基準適合性の検査や事業開始後の保安監査、必要に応じた事業改善命令の発出等、必要な施策を講ずることにより総合的に安全を担保してまいりました。また、近年の規制緩和等の運輸事業者を取り巻く環境変化や事故等の態様に対応して、保安監査等の事後チェックの充実強化を図ってきたところでございます。
 今般、JR西日本福知山線脱線事故を始めとしてヒューマンエラーが関係すると見られる事故やトラブルが多発している状況にかんがみ、運輸事業者に対する新たな監視、監督の手法として、本法案において、事業者におけるトップから現場まで一丸となった安全管理体制の構築を図ることとするとともに、本法案の施行に合わせて、その監視を行う運輸安全マネジメント評価を実施することとしております。また、更なる対策として、鉄道の運転士の資質向上、速度制限装置等に係る技術基準、航空交通管制に係るヒューマンエラー対策等についても検討を進め、公共交通機関の総合的な安全対策を推進してまいります。
 次に、JR福知山線脱線事故についての認識と事故後の安全対策についてお尋ねがございました。
 安全は運輸サービスの基本中の基本であり、安全性の確保が利用者に対する最大のサービスであります。しかしながら、昨年4月25日、JR福知山線列車脱線事故が発生し、多数の死傷者が生じる悲惨な事故となったことは誠に遺憾であります。改めて、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表し、御遺族にお悔やみを申し上げますとともに、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。
 事故原因につきましては、航空・鉄道事故調査委員会が精力的に調査を進めており、昨年9月6日に経過報告と建議を行うとともに、引き続き科学的、客観的な観点から、事故の背景も含め原因究明に向けた調査に取り組んでいるところでございます。
 国土交通省といたしましては、速度超過防止用ATS等の緊急整備や運転士の資質向上の検討に着手するとともに、同委員会の建議を踏まえた技術基準の見直しや鉄道事業者における安全管理体制の確立等を含む本法案を今国会に提出するなど、再発防止対策に取り組んでいるところでございます。また、JR西日本に対する監査を行い、昨年11月15日、安全性向上計画の着実な実施について勧告したところでございます。引き続きその実施状況を確認し、必要な指導を行ってまいります。
 国土交通省といたしましては、このような事故を二度と起こしてはならないとの固い決意の下、原因究明と再発防止に全力で取り組み、国民の公共交通機関に対する信頼を一日も早く回復できるよう最大限の努力を払ってまいる所存でございます。
 JR伯備線の事故を踏まえた総合的な安全対策の確立についてお尋ねがございました。
 本年1月24日、JR西日本伯備線において保線作業中のJR社員4名が列車に触車し、3名が亡くなる事故が発生いたしました。
 JR西日本においては、事故後、再発防止の観点から、線路内及び線路に近接して作業を行う場合は、原則として当該区間には列車を進入させない措置をとることといたしました。国土交通省といたしましても、事故後直ちに職員を現地に派遣し調査を行うとともに、JR西日本米子支社に保安監査を実施し、原因究明と再発防止に万全を期すよう指導したところでございます。
 国土交通省といたしましては、今後とも引き続き原因究明と再発防止の徹底を図り、保線作業を含めた鉄道の安全対策の確立に向け全力で取り組んでまいります。
 人員削減や業務の外注など、事故の背後要因も含めた原因究明と対策についてお尋ねがございました。
 JR西日本の福知山線列車脱線事故や伯備線人身障害事故等、事故の背後要因まで踏み込んだ原因究明を行い、再発防止対策を講じることが重要であると考えております。事故調査において新たな事実等が判明した場合には、その内容も踏まえ、必要な対策をしっかりと指導することとしております。また、鉄道事業者における安全管理体制の確立等を含む本法案を今国会に提出し、事故の再発防止の徹底を期することとしております。
 国土交通省といたしましては、今後とも、引き続き原因究明と再発防止に全力で取り組み、輸送の安全確保に万全を期してまいる所存でございます。
 公共輸送における規制緩和と安全面への影響、安全監視のバランスについてお尋ねがございました。
 規制緩和については、社会経済情勢等の変化に的確に対応して、国民生活の質を向上させ、経済の活性化を図るという観点から、経済的規制の見直しを行うことは必要であると考えております。

 民間業者には適切な社会的規制

 一方、公共交通機関の安全は最も基本的なサービスであり、国民の公共交通に対する信頼の根本を成すものであることから、国として、民間の行う事業や民間事業者に対し適切な社会的規制を行うことにより、必要な安全の確保を図ってきているところでございます。
 社会的規制については、科学技術の進歩や社会情勢の変化に的確に対応して不断に見直しを行うことにより安全等の確保に努めてきたところでありますが、頻発するトラブルや事故を踏まえ、今般、公共交通事業者に対し、輸送の安全を確保するための取組の強化に向け、安全マネジメント評価の実施等必要な施策を行うため、本法案を提出したところでございます。
 ヒューマンエラーに対する見解とこれまでのヒューマンエラー防止対策についてお尋ねがございました。
 ヒューマンエラーに起因すると見られる事故やトラブルが続発したことを受け、昨年6月、外部の有識者にも御参画をいただきながら、省内に公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会を設置し、事故防止対策について検討してまいりました。
 その中で、ヒューマンエラーには、うっかりミスや錯覚等による意図せずに行ってしまうものと、行為者が行為に伴うリスクを認識しながらあえて意図的に行う不安全行動の二種類があるとされており、特に不安全行動については、これを容認する職場環境や企業風土等が大きく影響を与えていると考えられます。この不安全行動による事故を防止するためには、経営トップのリーダーシップの下、各交通事業者において、公共交通において安全の確保は最大、最優先の使命であるとの大原則を再度確認し、安全風土の確立のための具体的な取組を強化することが必要不可欠と考えております。

 安全マネジメント評価の導入

 本委員会での検討結果を踏まえ、ヒューマンエラーによる事故防止対策として、経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制を構築し、その安全管理の体制について国が監視する仕組み、いわゆる安全マネジメント評価を新たに導入することとし、このため本法案を提出したところでございます。
 法案の提出時期についてお尋ねがございました。
 日本航空グループにおける新千歳空港での管制指示違反などの安全上のトラブルは昨年3月に報告がなされたものであり、直ちに3月17日、事業改善命令を発出をいたしました。加えて昨年は、航空の安全上のトラブルとともに、4月25日のJR西日本福知山線における列車脱線事故など、他のモードにおいてもヒューマンエラーに起因すると見られる事故、トラブルが多発をいたしました。
 国土交通省としましては、このような状況を受けて、航空、鉄道、自動車、海運の各分野にわたってヒューマンエラーを防止し、輸送の安全を確保するための取組について、外部の有識者の御意見も伺いながら、横断的かつ総合的な検討を行い、その結果を踏まえて本法案の提出を行ったものでございます。
 公共交通に係るヒューマンエラー対策についてお尋ねがございました。
 昨年4月に発生いたしましたJR西日本の福知山線における脱線事故等、ヒューマンエラーが関係すると見られる事故、トラブルが多発した状況にかんがみ、従来の監督行政の延長ではなく、運輸事業者に対する新たな監視、監督の手法について検討するよう私から指示をするとともに、省内に外部の有識者を含めた公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会を設置し、検討を進めてまいりました。
 この委員会が昨年8月に行いました中間取りまとめにおいては、ヒューマンエラーが関係すると見られる事故等の防止のためには、事業者における安全意識の浸透、安全風土の構築のための具体的な取組を強化する必要があり、そのため、事業者においてトップから現場まで一丸となった安全管理のための体制の構築を図ること、その安全管理の体制について国が監視する仕組み、安全マネジメント評価を導入することが提言をされたところでございます。
 この趣旨を踏まえて、本法案におきましては、事業者に安全管理規程の作成の義務付け等を行うこととしており、また、本法案の施行に合わせて、国がその監視を行う運輸安全マネジメント評価を実施することとしております。これらにより、経営トップ主導の下、現場まで一丸となった安全管理体制の構築が図られ、ヒューマンエラーに係る事故防止につながるものと考えているところでございます。
 航空輸送の安全にかかわる情報の報告及び公表による効果についてお尋ねがございました。
 航空輸送の安全を確保するためには、トラブルを含む航空の安全にかかわる情報を、国、航空会社及び利用者において共有し、有効に活用していくことが重要と考えております。そのため、航空法の改正案においては、航空事故や重大インシデント以外の安全上のトラブルについても広く収集し、公表するための仕組みを導入することとしております。これにより、安全基準の見直しなどの予防的安全対策の実施や情報の共有化による事業者の安全の取組の促進などが図られることとなり、航空の安全性の向上に大きく寄与するものと考えております。
 事業用自動車の事故防止対策についてお尋ねがございました。
 自動車運送事業においては、運行中の安全は運転者が全責任を負う等の特徴を有していることから、営業所ごとに国家資格の運行管理者を配置する運行管理制度を基本に輸送の安全の確保を図ってまいりました。しかしながら、中小規模事業者が圧倒的に多い業界のため、安全が経営者の意識に大きく左右されたり、安全対策を運行管理者任せとして企業全体での安全確保が不十分となりがちなこと等、現行の安全対策の限界も見受けられるところでございます。
 このため、すべての自動車運送事業者に対し安全確保の責務を課し、安全マネジメントを新たに導入して、企業全体の安全意識の浸透を図ることとしております。安全マネジメントの導入に合わせ、運行管理制度の徹底と監査の強化を三位一体で進めることにより、自動車運送事業の安全性の向上に努めてまいります。

 厚生労働省と連携強化

 タクシー運転手の厳しい労働環境への対応と、貨物及び旅客運送事業者の安全性確保のための厚生労働省との連携強化についてお尋ねがございました。
 タクシーについては、平成14年2月の改正道路運送法施行後、新規事業者の参入や多様なサービス・運賃の導入など、一定の成果が現れつつある一方で、タクシーをめぐる経営環境は依然として厳しく、タクシー運転者の収入にも影響を与えているところは承知をしておるところでございます。
 このため、昨年10月に交通政策審議会の下にタクシーサービスの将来ビジョン小委員会を設置し、輸送の安全と利用者利便の増進を図るため、今後の望ましいタクシーサービスの在り方、その実現のために必要な環境整備方策について御審議をいただいているところでございます。ここでの審議結果を今後の政策立案に適切に反映してまいりたいと考えております。
 また、規制緩和後の事後チェック体制をより確実なものとするため、トラック、タクシー、バスについて、原則無通告での監査の実施、新規事業者への早期監査の実施等、予防的監査への重点化、監査の強化を2月1日から行っているところでございます。
 さらに、労働時間等適正な労働条件の確保は、自動車運送事業における輸送の安全と密接な関係にあることから、従来より厚生労働省との連携を図ってきているところであり、過重労働の労働基準法違反について労働基準関係機関との相互通報制度を設け、監査や処分を行い、事故防止を図ってきたところでございます。さらに、本年4月から最低賃金法違反の疑いについても相互通報制度の対象に加えるとともに、タクシー事業者については社会保険等への未加入状況等についても通報制度を創設し、労働基準関係機関との合同監査、監督も予定するなど、更なる連携強化を図っているところでございます。
 国土交通省といたしましては、こうした取組により、輸送の安全の確保に一層努めてまいる所存でございます。
 連続立体交差事業の効率化方策並びに今後の踏切対策に関する目標及び予算についてお尋ねがございました。
 連続立体交差事業の一層の推進を図るため、今回の法改正において、事業者の積極的な参画を得るインセンティブとして、事業者の負担に対し長期無利子資金を貸し付ける無利子貸付制度を創設をしております。平成18年度予算におきましては、地方公共団体の体制と資金の両面を支援する立替え施行制度について、鉄道事業者に限定されていた立替え施行者の対象を特別目的会社、第三セクターなどに拡大するなどの制度的な充実を図ることとしております。
 今後の踏切対策の数値目標等についてでございますが、全国のすべての踏切を対象に踏切交通実態の総点検を実施中でございます。現在の見通しとしましては、開かずの踏切約六百か所を始め、緊急に対策が必要な踏切約1300か所について、今後5年間で歩行者対策や賢い踏切の導入などの速効対策を進めます。また、抜本対策が必要な箇所については、立体交差化等による踏切除却のペースを2倍にスピードアップしてまいる所存でございます。
 国土交通省では、踏切対策を重点施策の一つとして位置付けて積極的に取り組み、厳しい財政事情の下においても予算を伸ばしてきているところでございまして、平成18年度予算案では約3700億円を計上しております。今後とも、踏切道の改良を積極的に推進するため、必要な予算の確保に努めてまいります。

 一元的な事故調査機関設置はさらに検討

 航空・鉄道事故調査委員会の調査の在り方、事務局の組織体制についてお尋ねがございました。
 事故調査委員会の事故調査は、ハード面、ソフト面の両面から多角的に行うことが重要であり、JR福知山線列車脱線事故を始めといたしまして、これまでも事故の背後要因を含めた総合的な観点から、事故に限らず、事故の兆候についても調査を行っているところでございます。
 事故調査委員会事務局における人員は、新たに企画調整課を設置する等、41名から54名と、13名の増員を図る予定でございます。予算措置については、平成18年度当初予算として対前年度比約1.6倍の1億5000万円を計上しているところでございます。
 航空・鉄道事故調査委員会の在り方についてお尋ねがございました。
 事故調査機関については、アメリカのNTSBのようにすべての輸送モードを所管する事故調査機関を設けている場合もあれば、イギリスやドイツのように各輸送モードごとに異なる事故調査機関を設けている等、諸外国においてもその形態は様々でございます。御指摘の陸海空の一元的な事故調査機関の設置については、輸送モードごとに事故原因について特徴が異なっていることを踏まえ、更に検討を深める必要があると考えております。
 航空・鉄道事故調査委員会事務局職員の人材についてお尋ねがございました。
 事故調査委員会の事故調査官は、航空・鉄道事故調査の特性から、航空機の操縦、車両の制御及び人間工学など専門的な能力を持った者を、国土交通省はもとより、防衛庁や民間から任用をしてきております。今後とも、専門性を持った人材を適材適所に配置をいたしてまいりたいと考えます。
 最後に、航空・鉄道事故調査委員会の内閣府への移管についてお尋ねがございました。
 事故調査に当たりましては、事故分析に必要なデータを国土交通省に求めるなど、国土交通省との緊密な協力の下に行うことが有効であり、今後とも引き続き国土交通省に置くことがふさわしいと考えております。
 また、委員会の独立性については十分に確保することが必要であると考えております。このため、委員会設置法においても、委員会の委員長及び委員は独立してその職権を行うこととされ、また、委員の任命についても両議院の同意の下で行うこととされているところでございます。

答弁 川崎 二郎・厚生労働大臣


 企業のトップの安全衛生への積極的に取り組みが重要

 労使による安全衛生の取組の在り方について、企業活動に伴う事故や災害を防止するためには、各企業のトップが安全衛生の重要性を深く認識し、トップ自らが積極的に安全衛生への取組を行うことが非常に重要であると考えています。さらに、事業場に設置される安全衛生委員会等の場を活用し、内部告発者の保護も含め、労使が協力して安全衛生に関する問題を調査審議することも重要であると考えています。
 私は、このような取組を通じ、各企業において安全と健康を最優先する企業文化を確立し、労働災害の防止を徹底していくことが重要であると認識しております。
 バスやトラックの運転者の事故に関する原因分析とその対策についてお尋ねがありました。
 陸上貨物運送事業等における交通事故については、長時間運転による疲労や過積載を始めとする荷の積載状況、ヒューマンエラー等によるものもあると考えられます。このような問題に対応するため、厚生労働省においては、適正な労働時間管理及び走行管理、労働者に対する教育の実施等を内容とするガイドラインを策定し、関係事業者に対する指導を実施してきたところであります。
 さらに、来年度においては、長距離トラック運転手については、勤務実態と事故との関係について調査研究を実施することを予定しており、こうした調査研究を踏まえ、今後とも交通労働災害防止に取り組んでまいります。
 タクシー運転手の厳しい労働環境の現状認識についてお尋ねがありました。
 平成16年におけるタクシー運転手の年間総実労働時間は2412時間であり、需給調整規制廃止前の平成13年とほぼ同水準であるものの、全産業平均と比べ216時間長くなっております。また、平成16年の年間給与額は308万円であり、平成13年度と比べ26万円減少しており、しかも全産業平均と比べ235万円少なくなっております。
 このように、タクシー運転者を取り巻く労働環境は厳しい状況となっているものと認識しております。

 労働基準関係法令違反は厳正に対処

 最後に、貨物及び旅客運送事業の安全性確保のための国土交通省との連携強化についてお尋ねがありました。
 自動車運転手の労働時間等の最低労働条件の履行確保は自動車運送事業における安全性の確保と密接な関係にあることから、その指導をより効果的に行うため、来月から、タクシー事業者に対し労働基準監督署と地方運輸支局との合同による監督、監査を実施することとしており、これを着実に実施していくことが重要であると考えております。
 また、厚生労働省としては、これまで積極的に監督指導を行っているところでありますが、今後ともこの的確な実施に努め、賃金、労働時間等の労働条件について労働基準関係法令違反が確認された場合は厳正に対処してまいる所存でございます。


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