定率減税の縮小・廃止より勤労者の生活改善が先
景気回復と税制の抜本改革の中で考えるべきこと
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参議院議員 水岡 俊一
水岡 俊一・参議院議員
今日はとりわけ定率減税のことについて財務省、総務大臣に質問をしたい思っております。
財務省は、衆議院等の質疑の中で、景気は回復局面が続いているということで、定率減税の縮減、廃止については正当性があるのだと、おっしゃっています。私は、今のサラリーマン、勤労者の生活実態に視点を当てて考えてみると、非常に厳しい実態があると思うんです。ですから、それらについて今財務省がどのような見解を持っておられるのか、お聞きをしたい。
石井 道遠・財務大臣官房総括審議官
勤労者の生活実態についての認識という点についての御質問でございます。
生活者の方の意識に関するいろいろな調査がございまして、一概に結論付けられない点がございます。1つは、昨年9月に日銀が実施されました調査では、半数ぐらいの方が暮らし向きが悪くなっていると答えておられます。他方で内閣府の調査では、暮らし向きが3年ほど良くなっているという結果が出ています。生活者の意識について必ずしも暗い見方ばかりではない、様々なものがあるというのが現実ではないかと思っております。
今の景気との関係でマクロ的に家計部門の状況を申しますと、企業部門は今非常に収益、設備投資を始め好調でございます。そのような中で、これが家計部門にも今波及をしている状況だと思っておりまして、有効求人倍率が上昇する、あるいは失業率も低下するという中で雇用情勢の改善が見られております。足下の勤労者の所得について、10―12月期のQEにおきましては、雇用者報酬がプラスの方向に転じる、あるいは家計調査におきまして、勤労者世帯の実収入あるいは実質可処分所得もプラスに転じるというような動きが見られております。
全体として、企業部門の改善が家計部門にも波及する動きが見られているというのが実情ではないかと考えております。
水岡 俊一・議員
家計調査報告という話が出ましたが、私は、総務省の家計調査報告においては総世帯ですべて明らかにマイナスの数字が出ていると了解をしておりましたが、その点についてはいかがでしょうか。
石井・財務大臣官房総括審議官
家計調査におきます勤労者世帯の実収入につきましては、2004年には、前年に比べまして1.0%の増加、あるいは実質可処分所得も1.0%の増加になっていると承知しております。
景気判断と勤労者の生活実態
水岡 俊一・議員
日銀短観あるいは内閣府、総務省の調査、それからGDP統計といった指標、いろいろな数字を考え合わせてみても、断定的に景気が良くなっていると、そしてサラリーマン、勤労者の生活実態が改善をされているということがはっきりしないと私は思うのです。そんな中で定率減税の縮減、廃止をもくろむというのは、私は理解できないのですが、その点についてどうでしょうか。
石井・財務大臣官房総括審議官
様々な指標が出ておるのは事実であろうかと思います。けれども、一部弱い動きが見られる中でも、大局的には景気が回復している、なかんずく企業部門中心に回復が続いている中で、それが徐々にではありますが、家計部門にも波及をしつつあるというのが現状ではないかと思います。
定率減税の廃止との関係で申しますと、これがどのように影響を与えるかということについては、いろいろな額について、特に2005年度における額が限られたものであること、あるいは歳出面でもいろいろな措置が併せてとられておりますので、総合的に判断して、景気あるいは消費に与える、家計に与える影響というものは判断する必要があると思います。現状においては、全体としての回復が続く中で、今般、定率減税の廃止についてもお願いをしたいということでございます。
水岡 俊一・議員
大局的に見てというお話がありました。衆議院の予算委員会あるいは総務委員会の議事録を見ても、そういった景況判断というのは見解の相違だというところに落ち着いてしまって、折り合うところはないのだろうと思っています。
そんな中で、景気をどういうふうに判断するのか。あるいは大局的に見てこういった方向であろうという御判断があろうかと思いますが、問題は、国民がどのように感じるかというところではないかと私は思うんですね。
最近、社会保険料の負担あるいは増税の傾向の中で、医療費や年金保険料、雇用保険料も相次ぐ負担が増になっています。それから配偶者特別控除の廃止、公的年金控除の縮小といった様々なことがかなり消費を抑えるというような方向に、国民レベル、庶民レベルからすると働くんではないかという懸念を私たちはどうしても捨て切れないんです。そういった面についてはどういうふうにお考えでしょうか。
石井・財務大臣官房総括審議官
今回の定率減税の縮減、あるいは保険、年金保険料等の制度改正等も併せてこれまで行われてきておりますけれども、この点につきましては、負担増だけで議論することは必ずしも適当ではないわけでございます。例えば配偶者特別控除の見直しに関連しては、児童手当の支給対象年齢の引上げなどの対策も併せて講じられております。また、社会保障給付の総額も年々増加をしているという歳出面の実態もございます。それから定率減税の縮減等によります増収分の一部は年金財源に充てられることによりまして、将来の年金に対する不安解消という点もあろうかと思います。したがいまして、歳入歳出全般を見まして総合的に判断をする必要があろうかと思います。
具体的に、消費についてマイナスの影響があるんではないかという点が御質問の中心だろうと思います。
これもいろいろな指標が現在あるわけでございますが、先ほどの、家計部門の報酬等で徐々にプラスの数値も出ているということを申し上げましたが、1月に入りまして、消費関連指標も、1月の実質消費支出、これは昨年末が御承知のとおり弱かった反動という面も若干はございますけれども、前年比で0.5、あるいは前月比で4.3と。あるいは、百貨店等の商業販売統計も1月になりまして、前年比2.4、前月比4.6と、非常にいい数字も出ておるわけでございます。
したがいまして、企業部門の好調が家計部門にもなお一層波及していくように、更に努力を続けていくことによってこの家計の所得の増加あるいは消費の増加と、これを通じた内需中心の景気回復ということを目指すべきものだろうというふうに考えております。
マイナスのアナウンス効果
水岡 俊一・議員
消費がどのように上がっていくのかというところが決め手にはなると私も思います。だから、消費が上がるのか下がるのか、この判断が非常に難しいところだと思います。
私たちは、やっぱり定率減税が縮減をされる、やがてはなくなってしまうというマイナスのアナウンス効果というのがかなりあるのではないかと思うんです。実際に家計に響く数字よりもそのことが大きいのではないかという懸念を持っているんです。そのことについてどう考えておられるのか。マイナス効果、単年度的には非常に小さい数字かもしれない。しかし、これが2年、3年と続いていくと、かなり大きなものになってくると私は考えています。
そういったことも含めて、今は、縮減というお話です、廃止というところまではおっしゃっていないかもしれないけれども、これは廃止ということがもう根底にあってお話が進んできていると私たちは見ています。消費の拡大等の判断をどの辺りでして、廃止を言うのか言わないのか、この辺りのお考えはどうでしょうか。
加藤 治彦・財務大臣官房審議官
ただいま国会に提案させていただいております税法改正におきましては、正に定率減税の2分の1縮減をお願いいたしております。その後の問題につきましては、今後また改めて税制改正プロセスの中で御議論をしていただくということで私ども考えておりますが、ただ、2006年度税制改正におきましては、三位一体改革に伴います国から地方への税源移譲の問題がございます。
したがいまして、やはり税制の抜本的な見直しは避けて通れない、この定率減税という景気対策のための臨時、異例の制度というものは見直さざるを得ないと基本的な認識は持っております。しかし、実際に具体的にどういうふうに判断をするかということにつきましては、2006年度税制改正の議論の中で決定していくべきものと考えております。
水岡 俊一・議員
税制の抜本改革をしていかなきゃいけない、そこが1番の問題だと私は思います。一方、ちょっと視点を変えてみますと、内閣府が発表した2002年度の県民経済計算、新聞にも出ておりました。
県民所得の地域間格差が拡大をしています。現在もその状況は更に厳しくなっているのではないかと考えます。大企業と中小零細企業の格差、そして中央と地方の格差の拡大が進んでいて、特に地方にとっては到底景気の回復軌道に乗ったとは言えないと私は依然思っています。
県民の所得格差が広がるというような実態がある中で、財務省の景気の見通しというのは甘いんではないかという指摘がありますが、これについてはいかがですか。
石井・財務大臣官房審議官
大局的に景気が回復局面にあるという基本的な判断の下で、その一方、例えば日銀短観の12月調査を見ましても、中小企業の収益、あるいは業況感は大企業に比べて低いことは事実でございまして、中小企業をめぐる環境は依然として厳しいものがあると考えております。
また、地方経済の状況も、私どもは全国財務局の管内情勢報告というものを1月終わりに出しておりますが、東海地方あるいは中国地方は、比較的回復基調にある中で、北海道を始め横ばいの状況が続いているというような実態が報告をされております。その地域における産業構成、企業の輸出競争力の違いというようなことが背景となってばらつきがあるということは事実だろうと思っております。
これは、財務省も含めた政府全体といたしまして、構造改革特区、地域活性化の諸施策あるいは中小企業に対する様々な措置というものを通じまして、改革の成果が地域あるいは中小企業にも及ぶように努力をしていくということが必要であろうと思っております。
拡大する中央と地方の格差
水岡 俊一・議員
今、中央と地方の格差の拡大が進んでいると申し上げました。また、大企業、中小零細企業との格差も広がっている、あるいは高所得者と低所得者との格差が広がっている。個人消費がほとんど増えないという中にあって、定率減税の縮減を今行うということについて、総務大臣としての見解はいかがでしょうか。
麻生 太郎・総務大臣
これ導入するときの経緯は、1999年、極めて情勢が厳しいというときに合わせて定率減税は導入されたんだと思います。そのときと今と比べたら、地域格差を比べりゃ格段に良くなっております。
1番分かりやすいのは多分ボーナスなのだと思います。今年度に入ってボーナスは前年度比を8年ぶりに全部超えております。ボーナスの増加は96年以降8年ぶりというぐらいに、前年度を上回ったという例が一般的には最も、おお良くなったなと思わせる、それが1番分かりやすいところなんだと思っております。
それから、消費の件も、昨日出ました月例経済報告会の数字を見ていただいても分かりますが、個人消費にも構造変化が明らかに出ております。圧倒的に消費が伸びているのは65歳以上です。60歳未満は早い話がずっと横ばい。
金はためるものじゃない、使うものだということがやっと分かってきた高齢者の1つの考え方です。 明らかに変わってきておると思っております。2000年から2004年間の伸びだって1割以上伸びてきておりますから、もう数字の上ではっきりしております。
それから小売業に関する売上げがずっと減っております。それに比べて、サービス消費が一斉に上がっておるというのが形として非常にはっきりしている。支出の内容がかなり変わってきているということは、実態がかなり変わってきていると思いますので、少なくともあのころとはかなり違ったということは認めにゃいかぬところだと思っております。
ところで、生活保護世帯率が極めて高いところが私どもの選挙区ですけれども、そういったところにおきましても、数字としては、少なくとも6年前、7年前に比べて状況はかなり変わってきたと認識しております。じゃ、景気は良くなっているかということになりますと、財務省、若しくは石井さんの個人的見解と意見が違うのかもしれません。
私どもは、少なくとも企業が設備投資を金を借りてするというようになって初めて景気は良くなったと経営者が判断しているんだと思う。今、機械受注とか設備投資が猛烈な勢いで伸び始めましたが、銀行貸出しは増えておりません。ということは、自分のキャッシュフローの中で、若しくは直接金融でやっておるということになろうと思います。投資をしようと思っている企業家側が、ゼロ金利と言われるまでに金利が下がっているにもかかわらず、金を借りて設備投資をしようとしないという実態が今起きておるという状況の中にあっては、日銀のマネーサプライを増やしたからどうのこうのという種類とは全く違うのであって、極めて慎重にやっぱりやらにゃいかぬ。
これは前回、97年で愚かな政策をやった経験則から少なくとも半分だけというので様子見をしたのであって、こわごわやりつつあるというような意識なのかなと。
基本的には、それほど行け行けどんどんで良くなっているという景況判断の意識を政府が持っているというわけではないことを御理解していただければと存じます。
国民への説明
水岡 俊一・議員
慎重な判断をこれからしていくべきだと私たちも思うところであります。
2分の1だけでも様子を見ないかというようなお考えだろうとは思いますが、2分の1でも私たちはマイナスのアナウンス効果は大きいと、思っておるところです。
そこで、恒久的減税法は、所得税、住民税の最高税率及び法人税率の引下げも措置をされてきたわけであります。恒久的減税を廃止する条件がそろったと説明をしているわけですけれども、財務省としては、どうして最高税率とか、今過去最高の益を上げているような景況を示している法人の企業、法人の税率について論議をされないのか、そこについては国民に対してどのように説明をされるのか。
加藤・財務大臣官房審議官
1999年度改正で実施しましたいわゆる恒久的減税、正式名称は「経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律」で、先生御指摘のように、所得税の定率減税のみならず最高税率の引下げ及び法人税率の引下げ等も行っております。
ただ、法律の趣旨にも書いてありますように、それぞれ実施した項目ごとに異なった理由がございます。その点につきましては、これまで累次の税制調査会の答申等でも指摘しておりますが、例えば所得税の最高税率の問題は、やはり国民の勤労意欲、事業意欲に対する配慮、これは自助努力で稼得した所得についてやはり2分の1を超えて課税をする、これは先進諸外国もそういう例は今ございません。
それから、特に法人税は、国際的なこれだけグローバル化した中で、企業の国際競争力の維持は資源のない我が国がどうやってこれから頑張るかということに非常に密接に絡むものでございます。こういった点で所得税の最高税率とか法人の税率については引下げをさせていただいております。
これは、その当時から景気の問題とは別に、税制の固有の問題として常に議論をされてきたものでございます。このときの考え方も、最高税率と法人税率の問題は言わば税制の抜本的改革の一部先取りをして、当時の経済状況の中で、例えば負担を増やすというような問題はなかなかできない。当時、本来の税負担は所得税の本法でお願いしているものが国としての所得税負担ということで決まっておったわけですが、景気対策で定率減税ということで、2割削減した。
したがいまして、今回、今の景気状況の中で、当時との比較において、この財政状況の中で景気対策を行っていく必要性について、やっぱり見直すべきであるという基本的な認識の下で定率減税を縮減させていただくということに至ったわけでございます。
水岡 俊一・議員
要するに高所得者の最高税率を引き下げたのは、税制改革の先取りなんだ。低所得者、中程度の所得者に対する定率減税の問題は、多少あめ玉をなめさせておいてちょっと半分だけいただきますよというふうにしていけば影響が少ないでしょうと。こういうようなお話は、学者だとか政治家が難しい顔をしながら論議をするときに通用するかもしれませんけれども、国民には通用しないのじゃないですか。言い換えてみれば、取りやすいところから取っているということにほかならないじゃないですか。
加藤・財務大臣官房審議官
我が国の所得課税を客観的にごらんいただけば、その元々の税負担水準が極めて主要諸外国に比べて低い。これは、その結果として財政赤字という問題も惹起している部分はございますが、そうした前提に立って、この所得課税の在り方というのを議論していただきたいと思います。
私ども、例えばマクロ的に租税負担率、特に個人所得課税の国民所得比の負担率は日本は6%でございます。主要諸外国は大体2けたでございます。これは、間接税を相当な税率で取っている国もそういうことでございますので、確かに御指摘のように、現実に負担している国民の方々の現状からすればいろんな御意見もあろうかと思います。
ただ、国家財政全体も含めて考えた場合、所得課税の在り方、特に所得課税、消費課税をどういうふうに組み合わせていくかという中で、所得課税も相応の負担水準を求めていかざるを得ないというのがやはりトータルの考え方ではないかと思っております。
水岡 俊一・議員
いや、だから、そういったことを国民に対して説明ができるかと私は聞いているのです。今のようなお答えを、政府広報に出して全国に流してみてくださいよ。国民みんな怒りますよ。
今、課税最低限という問題があります。日本は下げられました。現在、夫婦子供2人の標準世帯で、日本は325万円、世界で1番低くなっています。夫婦そして子供1人でも最低、夫婦のみでも最低、独身だけアメリカに次いで2位です。アメリカは戻しがありますから、結果的には日本が1番低い所得者から税金を払わされているということじゃないですか。そういったことに国民は非常に懸念を持って感じている。
そういった中で、税制の所得再分配機能を高める観点から抜本改革が行われていないということで、恒久的減税を見直す条件が満たされていない。だから、定率減税の縮減、廃止というのは断じて私たちは許せないという立場なので、もう1回だけ答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
加藤・財務大臣官房審議官
課税最低限の問題につきましては、客観的に御指摘のような状況になっておると思っております。
今回の定率減税につきましては、その課税最低限の問題はちょっとおきまして、あるべき税制に向けての抜本改革は、既に例えば2003年度改正、2004度改正等々で、配偶者特別控除の問題とか年金課税の問題等も議論をさせていただきました。ただ、これもまた2006年度に向けて引き続きあるべき税制の抜本改革は進めていきます。
三位一体の改革との絡みもございますので、どうしてもこの2006年には税源移譲も含めたきちっとした税制改正を行わざるを得ません。そこで、その前提として今回、景気状況を踏まえて2分の1の縮減をお願いしておるわけでございます。
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